Discography

ディスコグラフィ

髙木知寿子 ベートーヴェン《皇帝》

高木知寿子 ベートーヴェン《皇帝》

ベートーヴェン Ludwig van Beethoven

1. ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
Piano Concerto No.5 in E flat major,Op.73 “Emperor”

 第1楽章:アレグロ (20:38) 1st Mov : Allegro
第2楽章:アダージョ・ウン ポコ・モッソ (7:29)
2nd Mov : Adagio un poco mosso
第3楽章:ロンド(アレグロ)(10:58) 3rd Mov : Rondo (Allegro)

2. エリーゼのために WoO.59 (3:04)
For Elise, WoO.59

・このCD誕生の陰に / 日下部吉彦

 ロシアや東欧圏のアーティストと親交のあるピアニスト髙木知寿子が、2010年4月29日、キエフ・フィルハーモニーホールで、ウクライナ国立交響楽団との共演で、貴重なCD録音を成功させた。曲目は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」。日本の第1線ピアニストが、現地のホールで、地元のトップクラスのオーケストラとの共演を、CDリリースすることは珍しい。
この快挙が実現するまでに、いろいろないきさつがあった。まず、8年前に遡る。髙木は、ブラチスラヴァで、スロヴァキア・フィルハーモニーとの共演で、「皇帝」を演奏した。それを、はるばる日本から聴きに来てくれた母が一ヶ月後に亡くなった。末期ガンだった。覚悟の東欧ツアーだったのだ。
髙木は、このことが心に残り、いつかもう一度、東欧のどこかで「皇帝」を弾きたい。強く、そう思うようになった。
チャンスがやってきた。去る3月10日(2010年)キエフ・フィルハーモニーホールでのウクライナ交響楽団の定期演奏会に、独奏者として髙木が
招かれたのだ。曲は、もちろん「皇帝」。ライヴ録音が終ってテープを聴き直したところ、なんとNG。なぜか1音も入っていなかった。思いがけないアクシデントに、髙木の不安が増大した。
ウクライナ響の特別の配慮で、急遽とり直しが決った。4月29日の深夜の録音。指揮者のヴォロディミル・シレンコをはじめ、オケ全員が、喜んで参加してくれた。第2楽章の冥想的な主題を、オーケストラが奏し始めたとき、髙木は思わず「あ…いま天国の扉が開く」と思ったという。そこに亡くなった母の姿が見えたのだろうか。

 ウクライナ国立交響楽団は、1937年、キエフで創立され、技術力の高さ、レパートリーの広さなどの点で、全ヨーロッパのトップクラスのオーケストラ。
ヴォロディミル・シレンコは、1989年キエフ音楽院を卒業した中堅指揮者で、2000年からウクライナ国立交響楽団の芸術監督を務めている。

(音楽評論家)

ウクライナ国立交響楽団との共演
Data
録音日1
2010年4月29日
録音会場1
キエフフィルハーモニーホール(皇帝)
録音日2
2010年5月25日
録音会場2
京都平澤スタジオ(エリーゼのために)
マスタリング
大塚貴雄(N.A.T)
カヴァーデザイン
吉田淳一(JY DESIGN) http://www.jy-design.jp
定価
2,500円 (MARS-ETT1412)
お問合せ
レイディエンス音楽事務所
事務所専用携帯
090-2011−3107