■ムジカノーヴァ2018年11月号に演奏会批評が掲載されました
▼以下記事内容▼
〜関西の演奏会から〜
髙木知寿子ワルシャワピアノトリオ
髙木知寿子は、京都市立芸に大学び、多彩な領域で精力的な演奏活動を継続しているピアニストである。最近ではワルシャワ・フィルのトップ・プレーヤーたちとの共演に特に情熱を燃やし、その非凡な成果を印象づけているが、当夜は、ヴァイオリンのピオトル・ ツェギエルスキとチェロのベルト・プトフスキの二人のコンサート・マスターをゲストに迎え、ブラームスの《ハンガリー舞曲第5番》、ラフマニノフの《ヴオカリーズ》、ベートーヴェンの《ピアノ・トリオ第3番》、フォーレの《エレジー》、ヴィターリの《シャコンヌ》、ショパンの《ピアノ・トリオ》というプログラムが演奏された。
日本人離れした強力なエネルギーの持ち主である髙木は、以前から輝かしい緊迫感と豊かなヴァイタリティに富んだ説得力のある熱演を聴かせていたが、当夜の演奏では、そこに深い相互理解に支えられた美しい成熟もが加味されていた。りきみのない表現から音楽的な表情のコクが滲み出ていたベートーヴェンなどは、まさにその典型というべき演奏であったが、コンサートの白眉は、何といってもピアノ・パートが演奏困難なことで知られるショバンの秘曲に示された髙木の見事なアプローチであり、さらにそれを支えた二人の熟達したバック・アップであった。4曲の小品に聴かれた次元の高い個性的な表現の魅力も、この演奏者たちの熟成された音楽的関係を痛感させすにはおかなかった。
(8月1日、京都府立府民ホール アルティ) 柴田龍一