ムジカノーヴァ2024年10月号に演奏会批評が掲載されました
▼以下記事内容▼
〜関西の演奏会から〜
髙木知寿子 室内楽
「ワルシャワピアノトリオ」は髙木知寿子の提唱で2007年に結成され、断続的に活動してきた。
現在はピオトル・ツェギエルスキのヴァイオリンとロベルト・プトフスキのチェロ。今回は6年ぶりの公演という。
まず、ベートーヴェンの《ピアノ・トリオ第3番》。若いベートーヴェンの覇気とハ短調のパトスが演奏から伝わっってくる。
第1楽章は2つの主題以外にも、多くの素材がが詰め込まれて、実に凝っている。緩徐楽章の変奏では、2つの弦楽器の美しい対話や主題が解体される最終変奏が印象に残る。スケルツォ風のメヌエットを経て、終楽章にバトスが戻ってくる。第2主題のメロディーが対照効果を生む。最後のコーダまで緊張の残る素晴らしい演奏だった。
ラフマニノフの《ビアノ・トリオ 1番「悲しみの三重奏曲」》は、冒頭の“衝突のレント”からチェロの歌が美しい。ピアノの色彩的で技巧的なパッセージとともに漸強して、激越な頂点に登り詰める。最後の葬送行進曲までラフマニノフらしいロマンティシズムを堪能した。
ブラームスの《ピアノ・トリオ第1番》は、ピアノとチェロの優雅な経律で始まる。第2主題はブラームスらしい憂いを含んだ旋律。いずれも特徴を掴んだ美しい演奏だ。余韻を引き延ばすコーダも、とても綺温。次のスケルツォはリズムの切れ味のよい主部とメロディックな中間部が好対照となる。緩徐楽章ではコラール風の主題が、厳粛で宗教的な感情を聴き手の心に呼び起こす。中間部のチェロの旋律も美しい。フィナーレは緩急自在のロンドで、楽想の重なりと変化を豊かに聴かせる。見事なブラームスだ。
(7月13日、京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ)横原千史