2012年6月24日 ザ・フェニックスホール〈大阪〉で開催いたしました「髙木知寿子ワルシャワピアノトリオアンサンブルコンサート〜ワルシャワフィルハーモニーのメンバーと共に〜」の演奏会記事がムジカノーヴァ11月号に掲載されました。
◆関西の演奏会から
《ムジカノーヴァ2012年11月号より》
髙木のピアニスト像を、乱暴を覚悟して一言で要約すると、「炎のピアニスト」という言葉がぴったりと当てはまる。彼女は芯のある重いタッチと強靭なテクニックの持ち主であり、それを駆使して恐ろしくエネルギッシュでヴァイタリティに富んだめったにない熱演を聴かせるピアニストである。コンサート・マスターのツェギエルスキーと競演したベートーヴェンは、しっかりとした演奏であった反面、彼女の状態が完全燃焼するまでに至っていなかったきらいもあるが、メンデルスゾーンとドヴォルザークでは、彼女の情熱がまさに炎のように燃えあがり、それが弦楽器奏者たちの熱演を引き出す結果を生み、力強い説得力に溢れる白熱的で緊迫したアンサンブルを実現させていた。この2曲では、演奏者たちの表現の方向性が一つになり、見事な推進力に溢れる表現が繰り広げられているが、ヨーロッパの名手たちを幾人も相手にして、彼女ほど雄弁に自己の音楽を語ることの出来るピアニストは、少なくとも日本人では珍しいといってよいだろう。異色の個性をもったこのユニークなピアニストに出会ったことは、筆者にとっても収穫であった。
(6月24日、大阪 ザ・フェニックスホール)柴田龍一